
詳細版 NEWDAWN式COI調査の方法
(2026年9月18日)
この記事で分かること
TOOLSの簡易版「安全なCOI調査のルール5」「NEW DAWN式COI調査の7ステップ」をもとに、生成AIの基本と、情報を守りながら公開資料を探し、確認する方法を説明します。
この資料は、NEW DAWNが公開資料や関連情報をもとに調査・整理した、COI調査に生成AIを活用する際の一つの考え方です。特定の方法だけを正解としたり、ほかの調査方法を制限したりするものではありません。生成AIの機能や規約は変更される場合があるため、本ページの情報は適宜アップデートします。日々の業務でいつでも最新情報を確認できるよう、ブラウザの「ブックマーク(お気に入り)」等に保存してご活用ください。
まず覚えておきたいのは、以下の3点です。
- 生成AIは、公開資料を探したり整理したりする補助に使う。
- 個人の相談内容は生成AIに渡さない。
- 最後は元の資料を人が確認する。
COI(Country of Origin Information/出身国情報)とは
出身国などの人権、政治、治安、法律、社会状況を調べるための情報です。 難民認定などで、一人ひとりの状況を検討するための判断材料の一つになります。 COIだけで、その人についての結論が決まるものではありません。
EUAAは『Single Programming Document 2025–2027(Revision 1)』で、生成AIなどの技術を、過度に依存することなく、想定されるリスクに留意し、必要なセーフガードを確保しながら活用するとしています。さらに、2023年の『Strategy on Digital Innovation in Asylum Procedures and Reception Systems』では、AIが難民手続きを支援・改善する可能性を認める一方、難民申請は人間によって審理・判断されるべきだとしています。
*EUAA(欧州連合庇護機関)は、EU加盟国の難民認定実務を支援し、COI(出身国情報)の調査・提供や研修、ガイドライン作成などを行うEUの専門機関です。
生成AI・LLMとは
- 生成AIは、指示に応じて文章や画像などを作るAIです。
- LLM(大規模言語モデル)は、多くの文章生成AIの基盤となるAIモデルです。大量の文章から言葉のパターンを学び、続く言葉を予測しながら文章を作ります。自然な文章でも、内容が正しいとは限りません。
- 主な生成AIサービスには、次のものがあります。(読み方/提供元)
・ChatGPT(チャットジーピーティー/OpenAI)
・Gemini(ジェミニ/Google)
・Claude(クロード/Anthropic)
・Microsoft Copilot(コパイロット/Microsoft)
- Gemini Notebookなど、指定した資料をもとに質問したり、複数の資料を横断して整理したりできるサービスもあります。
- どの生成AIを使うかは、利用している端末やOS(iOS、Android、Windows、macOSなど)、個人や組織のセキュリティ対策やルールに合わせて選ぶことが大切です。
COI調査では、生成AIは資料探しと整理を補助します
生成AIは、COI調査そのものを人に代わって判断するものではありません。 補助として、以下の場面などで活用できます。
- 検索語を考える。(例:「〇〇について調べるための検索キーワードを3つ挙げて」と入力するなど)
- 公開資料の仮の翻訳(下訳)を作る。*
- 長文の公開資料を要約する。
- 複数の公開資料を比較する。
- Web検索機能を使って、資料の候補を探す。
機能は契約や端末によって異なり、回答が常に最新で正確とは限りません。また、人権報告書等の資料は調査時には準備中で公表されていない場合もあります。使う資料の採用と評価は、人が行います。
* 生成AIが見つけた記事や報告書にも著作権があります。全文をAIに読み込ませて翻訳する場合は、著作権だけでなく、媒体やデータベースの利用規約・契約条件も確認します。公的機関の資料も利用条件を確認し、出典を明記して条件の範囲で使います。
多言語の資料は「仮の訳」から始める
- ChatGPTなどの主な生成AIサービスは日本語を含む複数の言語を扱えます。
- 原文と出力してほしい言語を指定すると、下訳として利用できます。
- 言語に対応していることと正確に翻訳できることは別であり、言語やサービスによって精度に差があります。
- 重要な内容は原文で確かめ、必要に応じて専門家に翻訳を依頼します。
調査前に確認する5つの安全ルール
1. 学習・データ利用の設定を確認する
- 入力した情報が、生成AIの学習やサービス改善に利用されないかを確認します。
- 変更できれば設定をオフにします。オフの仕方は使用する生成AIの公式案内を確認します。
- 設定を変えてもデータの保存や処理が完全になくなるとは限りません。入力する内容は慎重に判断します。
2. AIに渡す情報は、公開資料と調査に必要な条件に限る
- 本人や個別案件を特定・推測できる情報、相談記録は生成AIへ入力しません。
- 氏名を仮名や記号に置き換えても、地域や出来事などを組み合わせることで本人が特定できる場合があります。
- 公開資料に個人名などが含まれている場合も、調査に必要のない個人情報は入力しません。
- 生成AIに入力するのは、利用条件を確認した公開資料と、本人の特定につながらない調査条件に限ります。
3. 相談記録は、人が読み取り整理する
- 相談記録や面談メモ、個人情報を含む議事録などを生成AIに読み込ませ、要約や匿名化を依頼しません。
- 調査に必要な条件は人が直接読み取り、整理します。
4. 公開情報と非公開情報を分ける
- 報道や公的資料などの公開情報と、相談記録などの非公開情報を明確に分けます。
- インターネットで読める記事や報告書でも、その全文を生成AIに入力してよいとは限りません。著作権、利用規約、契約条件を確認します。
- Nexisなどの有料データベースで取得した記事は、利用契約の範囲を確認してから扱います。
5. AIの回答ではなく、元の資料を確認する
- AIが引用表示を示していても、それだけで正しいと判断しません。
- 必ず引用元の資料の該当箇所と前後の文脈を読み、回答と一致するか確認します。
NEW DAWN式・COI調査の7つの手順
1. 調べる内容を2つに分ける
- 国・地域の一般的な状況と、本人の証言に関係する具体的な出来事を分けます。
2. 一般的な状況を調べる
- 国・地域、時期、テーマを人が選びます。たとえば、人権状況、治安、法律、特定の集団をめぐる状況などです。
- 本人につながる情報を必要以上に組み合わせて調べることは避けます。
3. 具体的な出来事を調べる
- 本人の証言を人が読み、必要な条件を整理します。生成AIには抽出させません。
- 最初は時期や地域を広めに探して絞ります。
- 本人の特定につながる条件の組み合わせはAIに入力しません。
- 判断に迷うときは、入力せず、組織内で相談するか、AIを使わない方法で調査します。
4. 調べ方を広げる
- 日本語や英語で見つからない場合は、現地で使われている言語や、現地の報道でよく使用される言語でも探します。
- 世界のニュース検索のNexisや、過去のWebページを保存しているWayback Machineの使用も選択肢になります。Nexisは東京都立中央図書館・多摩図書館の館内で利用できます(2026年9月現在)
5. 元資料の内容と質を確かめる
次の観点で確認します。
- 関連性:国・地域、時期、対象となる集団、論点が調査内容と合っているか。
- 信頼性・客観性:誰が、どのような方法で調べた資料か。事実と意見が区別されているか。
- 正確性・最新性:記載内容が正確か。資料で対象としている時期はいつか。AIで要約・翻訳した場合は元資料と一致しているか。
- 追跡可能性・透明性:URLや発行元などを記録し、後から元資料を確認できるようにする。
- 重要な情報は、可能な限り独立した複数の情報源で照合する。
- 「分かったこと」と「分からなかったこと」を区別する。
- Gemini Notebookなどで複数の公開資料を比較する場合も、引用箇所は人が確認する。
- 当事者や情報提供者の安全に関わる情報は、公開・共有する範囲を慎重に判断する。
6. 調査した範囲を記録する
- 情報源、検索条件、対象期間、調査日、URL、該当ページを残します。
- 探しても情報が見つからなかった場合は「調査した公開情報の範囲では確認できなかった」と記録します。これは「その出来事は起きなかった」という意味ではありません。
*公的資料は調査や公表に時間がかかることがあります。公開情報が少ないことだけを理由に、本人の証言を否定することはできません。
7. 人が評価し、複数人で確認する
- 情報と証言の関係を複数の人が確認し、評価します。
- 元の資料、引用箇所、検索範囲、評価を、必要に応じて組織内の別の担当者が確認できるように記録します。
入力や判断に迷ったときは
- いったんAIへの入力を止める。
- 組織内で検討、または専門家に確認する。
- AIを使わず、人が調べる方法へ切り替えることを検討する。
調査を行う際のセルフケア
- 生成AIを使ったCOI調査では、短時間で深刻な人権侵害の記録に多く触れることがあります。自身への心理的なリスクを認識し、こまめに休息を取るなど、心身のケアを大切にしてください。
当事者への説明について、組織で方針を決める
COI調査で生成AIを利用するときは、当事者にどのように説明するか、組織で方針を決めておくことも大切です。
- 何のためにAIを使うのか
- どの情報を扱い、どの情報は扱わないのか
- 本人にどのように説明するのか
- AIの利用を望まない場合にどう対応するのか
を考えます。
なお、本人の同意があっても、この資料で定めた「個人情報や相談記録を生成AIに入力しない」というルールは変わりません。
もっと詳しく学びたい方へ
NEW DAWNでは、COI調査と生成AIの使い方を学ぶ1対1のオンライン講座を開催しています。
公開資料の探し方、AIに入力する情報の線引き、元資料の確認方法などを、実際の調査の流れに沿って扱います。「自分に合った生成AIを選ぶところから知りたい」「今の調査手法で合っているか確認したい」という方もご参加いただけます。
質問やお問い合わせがある方へ
記事の内容や生成AIについての質問・お問い合わせは、下記からお問い合わせください。
お問い合わせフォームには、難民当事者や相談者の具体的な事情・相談内容は記入しないよう、ご注意ください。
