幻の麺料理をたどる

今日ご紹介するのは、魚柄仁之助さんの
『幻の麺料理 再現100品』(青弓社)。

本を開いてまず目に留まったのが、

「うどんの麺と西洋料理法の合体」

という章でした。

明治以降、日本には西洋料理や中華料理が入ってきます。

ところが、料理の作り方を知ることができても、当時はパスタや中華麺を簡単に手に入れられるわけではありませんでした。

そこで使われたのが、うどんやそうめんです。

マカロニやスパゲティ、中華麺の代わりにうどんを使い、味付けや調理法は西洋風や中華風にする。

本の中には、そんな料理がいくつも登場します。

「うどんのエッグソース和え」という料理もそのひとつ。

今の感覚からすると、少し不思議な組み合わせです。

でも、ページを読んでいるうちに、「代用品で済ませた料理」というより、知らなかった料理を自分たちの食卓に取り込もうとした試行錯誤のようにも見えてきました。

海外から料理の情報が入ってくる。
けれど、同じ材料がそろっているわけではない。

それなら、いま手に入るもので作ってみる。

料理は、国から国へ、そのままの形で移っていくわけではありません。

手に入る食材や調味料、台所の環境、食べる人の好みに合わせながら、少しずつ姿を変えていきます。

いま私たちが「当たり前の料理」として食べているものにも、そんな途中の時間があったのだと思うと、古い料理本の見え方も少し変わります。

『幻の麺料理 再現100品』には、かつて料理本や雑誌に登場し、その後あまり見かけなくなった麺料理が数多く紹介されています。

レシピを読むというより、
「なぜこんな料理が生まれたのだろう」と考えながらページをめくるのが面白い一冊です。

料理本には、料理だけでなく、その時代に何が手に入り、どんな土地の料理に関心が向けられ、人々がそれをどう自分たちの暮らしに取り入れていたのかも残っています。

そんなところまで読んでみると、料理本は小さな歴史資料のようにも見えてきます。

10月12日の「旅する読書室」では、この本をはじめ、世界各地の料理本や少し昔の日本の料理本を並べます。

気になる一冊を開きながら、料理や暮らしについて話す時間もつくる予定です。

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